其の685:遥かなり60年代「If  もしも....」

 早くも3月になりまして・・・花粉がきつい!!

 

 筆者が自分の生まれた60年代から80年代の映画を特に好んで観ている事は「本当に面白い映画、教えます!」を読んで頂いた方々にはとっくにお分かりの事ですけど、後に「八月の鯨」他を発表するリンゼイ・アンダーソン監督作にして第22回カンヌ国際映画祭グランプリに輝いた「If もしも....」(’68・英)も・・・筆者が好む傾向の一作^^。自由を求める学生さん達が主人公の過激な映画です。当時はまだTVゲームもスマホもないので、どんな青春を送っているかにもご注目。

 

 舞台は、伝統ある厳格なパブリックスクール(男子生徒オンリー)。その閉鎖的な空間では、上級生による下級生への体罰やいじめ、男性教師たちが気に入った生徒を下僕として扱うなどの問題行為が行われていた。そんな学校に反抗的な態度をとるミック(=マルコム・マクダウェル)らは教師たちから鞭打ちの罰を受けた事で不満を倍増させていって・・・!?

 

 今作が上映されて程なくパリで大規模な運動が起こる等、この当時は世界的に「学生運動」がたけなわな時期。スタッフサイドは特に意識していなかったそうだが、時代の流れに乗る事の出来た作品と言えよう(で、当時賛否両論)。そしてこれまでに何度も書いているように、映画史上の不朽の名作「2001年宇宙の旅」が公開された年でもある<1968(昭和43)年>は、近現代史ならび世界映画史において重要な年でもある。

 映画はパブリックスクール出身の脚本家が学生時代を思い出して書いたオリジナル脚本からスタートしたそうだが(その後、監督交えて大幅修正)、「大人たちに抑圧された学生たちが暴走していく」・・・なんてお話は、「いちご白書」然り、沢山あるものの、今作の見どころはその<映像スタイル>にある。基本<カラー>映画なんだけど、時々<モノクロ>映像になるんですよ。通常は過去のシーンが白黒ってパターンではあるんだけど、タイトル通り、どちらが「現実」のシーンでどちらが「If」のシーンか考えながら観ていくと面白いと思う。カラーと白黒を使い分ける事で<もしもの寓話感>をより醸し出す事に成功している。

 個人的には主演がマルコム・マクダウェルというのもポイント高し!あの「時計じかけのオレンジ」(’71)のアレックスだぜ~🎵今作は彼のキャリア初期作だが、マルコムによればスタンリー・キューブリック監督がこの映画を観て、自分を「時計じかけのオレンジ」にキャスティングしたと言う。「If  もしも....」の主人をより凶悪化するとアレックスになる・・・つながった!!あくまで筆者限定の思考(笑)。

 

 ラストはネタばれするんで、いつも通り書かないけど・・・いつの世も自由を求めて体制に反抗する若い人は存在するわけで、こういうパワーがあってこそ世界は変わってきたとも思う(あくまでこの映画の場合は「対学校」、「対教師」であって世界を変えようとはしていないけれど)。21世紀のいま・・もう「学生運動」なんて起きないんだろうーなー(残念)。この映画「大傑作!」とまでは褒めませんが、60年代末の時代を映した貴重な一作である事に間違いない。

 

<どうでもいい追記>先月購入した今村昌弘著「魔眼の匣の殺人」をようやく読了。完成度は前作の方が設定の衝撃度もあって上だけど、最後のサプライズはびっくりした。で予想通り、シリーズは第3弾に続くのであった❤