<新作寸評>「屍人荘の殺人」を観たけれど

 2019年11月も残り僅か。令和元年ももう少し・・・早っ(焦)!

 

 先月末から超多忙で、その反動か一昨年以来の風邪をひいてしまいました。病院にも行ったのに2週間たっても完治しません・・・つらいっす。

 

 そんな中、先日、12月に公開されるミステリー映画「屍人荘の殺人」を試写で観ました。今村昌弘のデビュー作にして、国内の主要ミステリー賞4冠を達成した話題作で個人的に発売早々に読んでいたので(その後発売された2作目も読んだ)少なからず思い入れのある小説。→→→で、実写映画化!さて、その出来とは?!上映前なので、短く書きます。もちネタバレなし^^。

 

 神紅大学「ミステリー愛好会」の会長・明智(=中村倫也)と助手の葉村(=神木隆之介)は、学内で起きる事件に首をつっこんでは迷推理を披露する日々を送っていた。   そんなある日、剣崎比留子(=浜辺美波)と名乗る女子大生探偵が現れ「ロックフェス研究会」の合宿への参加を持ち掛ける。去年、この合宿に参加した女子部員が行方知れずになっている事、また部員宛に謎の脅迫状が届いた事実を伝え、2人の気を引くー。

 3人が訪れた郊外の洋館「紫湛荘」には、「フェス研」OBを含む曲者揃いのメンバーが集まった。そして夜、ロックフェスが行われた会場で、突如、想像を絶する事態が発生!!参加メンバー及び、フェスに来ていた人々は「紫湛荘」で立て籠る事となる。すると翌朝、館内でひとりの惨殺死体が発見されたー!!

 

 普通は絶対ありえないクローズド・サークル状態(ネタバレするから書けん!メンゴ)で起こる連続殺人事件。まさに<奇想>と<本格ミステリ>の融合が本作。この新機軸が4冠受賞最大の理由。筆者も楽しく読ませて頂いた。

 で、映画は原作のタッチと大きく異なり・・・コメディータッチになっていた!この辺りは脚本家(「TRICK」シリーズ他の蒔田光治)と監督(TVドラマ「金田一少年の事件簿」、「任侠学園」他の木村ひさし)の資質によるところだろう。木村監督は大分、現場でネタ足したそうだし(苦笑)。同じ<ミステリー>関連という事で、市川崑金田一耕助シリーズ「犬神家の一族」の某有名編集部分と「悪魔の手毬唄」の某キャラのパロディまであり^^。

 浜辺美波神木隆之介中村倫也は割と原作っぽいキャラ演じてて(コメディだけど)好感を持てたが・・・他の俳優陣は豪華メンバーながら完全に笑い取りにきたキャスティング(苦笑)。「コメディタッチにするよー」という狙いが見え見え。この作風の改変は評価が大きく分かれるところだろう(今村先生は喜んでいるようだが)。

 最も重要な事は・・・これ、原作及び続編(おそらく3作以降も書かれる筈だ)読んでないと観客が知る訳もない事なんだけど、映画は<何故、フェスがあのようなカオスに陥ったのか>という肝心要の原因が説明されずに終わっちゃう!!ネタバレするんで詳しくは書けないけど、これは続編にもつながる重要な要素で・・・映画は「あくまで単体で終わらせよう」という意図があったと思うしかない。もし今作がヒットせず続編も映画化出来ないと設定が中途半端で終わっちゃうからね・・・。映画の上映時間は2時間ジャストだけど、あと10分ぐらい長くていいから、エンドロールの後にでも、ちょっとカオスの原因について触れて欲しかった。

 

 原作忘れて今時の<ユーモア・ミステリー>だと思えば個人的には嫌いじゃないけど、もうちょい何とかして欲しかった・・・というのが正直な感想。ラストカットもあれじゃなくて、もうちょい先述の要素も含めて“余韻”が欲しかったなぁ~。「紫湛荘」内のセットもイメージ通りで良かったから・・・ああ、勿体ない!!

 

<どうでもいい余談>ピース・又吉先生の3作目の小説「人間」、ようやく読了。3作ともリアルタイムで読んでいる。職業柄、半分は“仕事として”読んだ部分もあるけれど。「火花」、「劇場」(←今度、これも映画やるな)、そして「人間」・・・基本、どの作品も主人公は又吉先生の分身である事はよ~く分かった。そして又吉先生は凄く繊細で、些細な出来事も常人より深~く掘り下げて考えて日々過ごしている事もよく分かった。読んでいて50代にもなったのに、未だ何も成しえていない自分にとっては胸が痛かったわ・・・。